小西 行郎『発達障害の子どもを理解する』を読みました

 

発達障害の子どもを理解する (集英社新書)

発達障害の子どもを理解する (集英社新書)

 

 

発達障害について、小児神経専門医の立場から論じた本。

 

以下のようなことについて述べられている。

 

(上から目線っぽい書き方になってしまいますが)次のような点からとてもよかったです。

  • (2011年の本なので、2020年現在だと古くなってしまっているが)具体的な研究結果が参照されているので、説明に説得力があった
  • 発達障害児支援の経験が豊富で、事例が多い
  • 親や障害児へ寄り添った論じ方をしている

繰り返し述べられているが、この本で何よりも伝えたいことは、発達障害児を理解することの大切さだろう。というのも、まず、発達障害は障害像があいまいで、発達障害児によって問題はそれぞれ異なっているからである。そして、発達障害児と向き合うためには、問題行動の意図や理由を理解することがきわめて重要だからである。

 

たとえば、発達障害児は褒めて育てればよいという見解について、著者は以下のようなコメントをしている。

ほめられたから自信がつき、叱られたから自尊感情が傷つく――発達障害の子どもはそれほど単純でも、弱い存在でもありません。そうではなく、彼らは「自分の行動の理由やその背後にある思いが理解されないまま叱責されつづけること」に傷ついているのです。 失敗をして、叱られても、それが納得のいくことなら自尊感情まで傷つくことはないかもしれません。でも「見る・聞く・感じる世界」がみんなと違っていて、望んで失敗したわけでもないのに、行動の一つひとつを非難され、叱責され、無視されれば、「自分であること」は永遠に認められないのだとあきらめ、自信を失っていくかもしれません。

西行郎. 発達障害の子どもを理解する (集英社新書) (Kindle の位置No.1715-1720). . Kindle 版.

 

また、発達障害児には運動障害が共通して見られるという報告が増えているらしい。それを踏まえて論じられている、著者の以下の仮説は、興味深かった。

「胎児期に生じる脳、運動、知覚の異常が、新生児期以降にコミュニケーションの障害を引き起こし、本格的な集団生活が始まる幼児期になって社会性の問題に発展する」 

西行郎. 発達障害の子どもを理解する (集英社新書) (Kindle の位置No.1036-1037). . Kindle 版.